ご提供：まきぃこさん

カマキリが自発的に獲る餌は一応動くものだが、何とか自発的に動かないものを餌にできないだろうか。街中ブリーダとしていろいろ試行錯誤してきた。以下に書かれている価格はたまたま私の周りで手に入るもので、参考価格と思ってほしい。

まず手始めは、死んだ虫を生きているように見せかけること。これは比較的簡単で、死んだ虫を糸で括ってカマキリの目の前で振ってやれば良い。腹の減ったカマキリなら飛びついて食べてくれる。気を付けなければならないのは、カマキリの種によって、また個体によって食べたいと思う餌の大きさが違うことだ。大きすぎると敵と勘違いして食べてくれない。

しかし死んだ虫を餌にするのは、生きた虫が手に入って初めてできること。さすがに死んでから時間が経って乾燥してしまったものは食べてくれないからだ。そこで街中で手に入る虫を探してみた。まず、爬虫類を扱っているペット・ショップで手に入るコオロギ。オキナワにいるというフタホシコオロギが一般的だ。ジューシーで動きも良く食欲をそそるらしいが、キック力が強いため弱ったカマキリにはちょっと重荷。しかも雑食性で蛋白が足りないと共食いする性質があるため、カマキリに対して大き目のものを入れて監視を怠るとカマキリの方が食われてしまうこともある。キック力の源である後脚を取り除いて与えるという手もある。また、きゃつらは壁を登るのが苦手だ。中がつるつるした樹脂のコップにコオロギを入れ、跳ねてぎりぎりコップの口に届いてそこまで滑り落ちるような角度に傾けてカマキリの前にかざしてやると、弱ったカマキリでも無事食べてくれることがある。１匹２０〜４０円程度。成虫♂の鳴き声に悩まされないで済む飼育スペースまたは神経が必要だ。

次にミールワーム。小鳥屋で売っている甲虫の幼虫。１００匹２００円程度とコスト・パフォーマンスが良い。跳ねて逃げることもやかましく鳴くことも無い。蛹は動かない餌として、成虫は動く餌としてオオカマキリなどに使用することができる。ただこいつも雑食性で顎の力が強いため、カマキリの方が思わぬ反撃を受けることがある。捕獲され食べられている最中に細長い体を曲げ、カマキリの前脚ふ節（カマの先の細い足先）を食い千切るやつもいて、そうなるとカマキリは以後似た形の餌を取ろうとしなくなる。そうでなくてもこのように細長い虫、地面を這い回る虫を餌と認めないカマキリも少なくない。半分に千切り、あるいはそのままで、糸にぶら下げると食べさせることができる。そっと切り口を口に近づけてやると、自分で捕まえて食べてくれるが、横着なカマキリは人に餌を持たせたまま食べてくれる。時間が無いときはイライラする（笑）。

どうしても生きた虫を扱ったり千切ったりするのが苦手、という人には、ハムでも代用できるのは朗報だろう。やはり糸で括ったり、ピンセットで摘まんでカマキリの目の前で振ってやると、生き餌と勘違いして食べてくれることがある。添加物入りのものは食べてくれなかったりカマキリにとっては害だったりするので避けた方がいい。問題は、無添加のハムが普通のものより高く、しかもちょっとずつしか食べてくれないのに日持ちがしないのでほとんどを人間が食べることになる。ラッキーと思うか勿体無いと思うかはあなた次第。

そして、街中ブリーダの友、困ったときのコンビニエンスは釣り具屋だ。ここには生きた餌がうようよいる。ハエの幼虫サシ１００匹１００円？、蛾の幼虫ブドウムシ２５匹６００円がお勧め。そのまま与えても良く、傷付けたり中の肉を絞り出して与えても良い。一応大顎らしきものは見えるが、カマキリにも指にも噛み付いたところは見たことが無いので安全だ。今までに挙げた餌を一切拒否するようなら、絞り出した肉をカマに擦り付けてやると、綺麗好きなカマキリは掃除をしようと舐め取って食べてくれる。周りに擦り付けようとすることもあるため、しばらく観察が必要だ。手の上でこれをやろうとしては行けない。止めはしないけどね。オオカマやハラビロのような大型のカマキリになると、釣り餌のエビも使える。水から引き揚げてケースに入れてやると、ビチビチ跳ねているところを何の迷いもなく捉えて食べてくれる。１匹３０円。

さてお待ち兼ね。固形物を一切口にしようとしないカマキリに使えるのが何と牛乳だ。コンビニで買え、保存の容易な動物蛋白というテーマで発見した非常食。食べ物を受け付けないカマキリでも水は飲むことにヒントを得た。代替品にヨーグルトってのも使える。面白いことに、人間でも牛乳嫌いがいるように、カマキリにも牛乳を嫌う個体がいる。複数のカマキリで試してみたが、同じ卵嚢から孵化した兄弟同士でも３分の１から５分の１は牛乳を飲みたがらないようだ。かと思うと中にはいつまでも飲み続ける牛乳好きもいるところもまた人間と同様だ。牛乳を飲む個体がこれを単なる水分補給の一環と捉えているのか、美味な蛋白源と見倣しているのかはより一層の研究が必要である。

具体的な牛乳の飲ませ方に付いては、日を改めて。「ミルク飲みカマキリ」というタイトルなのに期待した人、ご免なさい。